病院訪問記  近森会 近森病院                訪問日 平成20年1月15日〜24日
【所在地】
〒780-8522 高知市大川筋1 丁目1-16 TEL 088-822-5231(代)/ FAX 088-872-3059
理事長/院長  近森 正幸 
【病床数】    338床 
【診療科目】  内科・循環器科・消化器内科・神経内科・整形外科・外科・小児外科・形成外科・
          呼吸器内科・呼吸器外科・消化器外科・脳神経外科・心臓血管外科・放射線科・
          麻酔科・泌尿器科・皮膚科・リハビリテーション科・ER(救急センター)
急性期診療を得意とする近森会近森病院、ロビーには目を引く大きな水槽があり、観葉植物も多く安心して診療受けることができるような配慮が感じられた。

ベット稼働率が90%を常に超えるというこの病院、全国に先駆けて高齢化の進む高知県で今後の日本の急性期医療モデルになるであろう工夫が随所にあった。
外来は、1階と2階に分けられており、患者さんは多いが、それほど混雑した雰囲気ではなかった。また、病院スタッフの接遇もとてもよいと感じた。
【看護相談室】

曜日別で
・排泄、創傷処置・ストマケア
・禁煙、メタボリックシンドローム
・在宅支援相談
・高齢者の悩み相談
・口のリハビリテーション
・心の相談
の相談を患者さんが気軽にすることができる。
【朝の申し送り風景】
病棟は忙しく申し送りは効率的に行っている印象を受ける。写真奥の液晶テレビは電子カルテのモニターであり、多くのスタッフが情報共有。全ての病棟で申し送りに巨大モニターを採用しているわけではないが、この巨大モニター、いたるところで活躍していました。

常にほぼ万床状態で、在院日数が短く患者さんの状態把握は大変な様であった。それだけに、朝の申し送りは、どこの病棟も真剣でしたね。
【勉強会】

近森病院は、とにかく勉強会が充実している。毎日のように何らかの勉強会が催されている。写真は、2週間後に迫った近隣の総合病院との合同パス大会の意見交換会でそれぞれの病院のそれぞれの職種が意見を交わしていた。「クリニカルパスは、標準化から最適化」と話す久保田総看護師長、院内だけでなく地域とつながることでその効果が最大限に引き出される。
【主任看護師会】

各部署の主任看護師に久保田総看護師長からの伝達事項と、各部署での問題を共有し病院全体としての方向性を決める。400人近い看護職を束ねるというのは大変なことですね・・・。
<ER>
近森病院は、救急診療に非常に力を入れている。救急車は昼夜を問わずやってくる。そして、すべての職員がBLS(一次救命処置)をマスターし、多くのメディカルフタッフがICLS(二次的救命処置の基礎)をマスターしている。そのため、標準化された業務を滞りなく行われていた。実際、早朝のハートコール(院内の緊急スタッフ召集)の際にもそれぞれが役割分担してスムースな連携を見せてくれた。院内にもDMAT(災害医療派遣チーム)があり、救命スタッフの熱い心意気を感じる。取材期間中、非常に患者さんが多く、入院するためのベットが完全になくなった。ベットがないという理由で救急車を断る時の申し訳ない気持ちが、背中から伝わってきた・・・。
<CCU>
心臓手術件数、心臓カテーテル件数共に非常に多い近森病院。CCUは、常に多くの患者さんが利用されているようです。CCUと手術室は直結されており、清潔区域を通って帰ってくる。なんとCCUからは、手術中の様子や手術を受けている患者さんの心電図モニターを観察することができる。手術室でどのようなことが行われているとか、後どれくらいで帰ってきそうという情報って、病棟のスタッフによって重要な情報なんですよね。最近は、腎不全を合併した循環器疾患の患者さんが増えてきたそうです。重症の患者さんもいましたが、皆さん、淡々と仕事されていました。
<ICU>
心臓以外の超急性期の患者さんが収容されるICU。写真右は、呼吸器カンファレンスで医師や看護師ほのか理学療法士、臨床光学技士など多くの職種が参加して患者さんの治療の方向性について考える。近森病院は、チーム医療という言葉がこれほど定着する前から当たり前に「チーム」で動いていたということです。それぞれの職種の方がきちんと「信念」をもっておられるという印象を受けました。
【梶原看護部長と久保田総看護師長】

近森会は、それぞれ性格の異なる4つの病院で構成される。そのため、看護部長は、「近森会全体」を見渡し、総看護師長は近森病院に専念して管理を行う。梶原部長は、物腰は穏やかだが、淡々と本質を突いてくる話が魅力。久保田総看護師長さんにおいては、「密着取材(3月20日ごろアップ予定)」を参照してください。パワフルな方ですよ!
【医療安全委員会】
こちらは、医療完全委員会のカンファレンス

医療における安全は、組織として取り組む必要があり、日々の診療で学んだことを考察して臨床にフィードバックしていく必要がある。写真左は「指先呼称」をしている写真で、現在特に力を入れている項目だそうです。
【理学療法科】
【リハビリテーション部理学療法科】

前田 秀博科長

近森病院の発展とリハビリテーション部の関係は深く、現在ほど早期離床が叫ばれる以前から力を入れてきたそうだ。事実、理学療法士は、35名、作業療法士、8名、言語聴覚士2名の大所帯だ。一日も休まないリハビリの必要性を感じ、脳血管、運動器、呼吸、心臓を中心に曜日に関係なく行われ、その多くは、ベットサイドで行われる。そのため、看護師との情報の共有が図れるようになり結果、早期の離床が可能になったとのことだった。

前田科長とお話をする機会があったが、信念を持ったすばらしい方であった。前田科長は、心臓リハビリテーション学会の評議員を務めるほか、呼吸療法認定士、ヘルスケアトレーナー、介護支援専門員とマルチな活躍をしておられるが、なにより現状における問題点を把握し、それらを改善する力がすごい。日本呼吸ケアネットワーク代表の宮川哲夫氏をある大学病院で机を並べたこともあったそうで、多くのことを教えていただきました。近森病院のリハビリテーションは学ぶべき点が非常に多いです。研修先に自信を持っておススメします。
禁煙外来スタッフの写真
【禁煙外来】

禁煙外来は、薬剤部の一角でアットホームな感じで行われ、「診察」を感じさせない。患者さんは、禁煙の意思のある人、そうでない人それぞれであるが、それらを全て受け入れることのできる体制ができている。禁煙外来は、最初喫煙の害に疑問を感じたスタッフが勉強会を中心として集まり、現時の形になったそうです。「時代の流れ」で禁煙外来をしているのではなく、必要性を感じてやっているので、皆さん、楽しそうです。循環器の医師が中心で週に2回行われています。そろそろ、成果をまとめて学会発表するとか?

認知の歪みを直す「リセット禁煙」というものを見学させていただきましたが、非常に面白いです。喫煙は、ニコチン依存主ですから、「認知」を正さないと本当の禁煙にはなりませんからね。今回、見学させていただいた時の担当は、循環器内科の窪川医師で、熱心に話すその姿に感動を覚えました。患者さんも、「タバコ止めます」と帰って生き、すがすがしかったです。勉強になりました。

写真中央は、記者である「あおやぎ」です。暖かく迎えていただきました。
<図書室>

図書の量は多い。写真の3〜4倍はあるだろうか。月刊誌なども揃えられており、パソコンで素早く検索できるようになっている。椅子やテーブルもあり、外には飲み物の自動販売機がが格安で利用できるようになっている。また、司書さんが在中しており海外の文献でも素早く仕入れてくれるとスタッフからは評判だ。

近森会は、教育にとても熱心である。各種勉強会は全ての職種、部署で行われているうえ、パソコンを使ったE-ラーニングがある。臨床で必要な知識の確認ができる。学会や講習機会への参加にも病院の理解もあり、勉強が好きなスタッフが集まってくる理由がわかる。

人間、一生勉強ですから、環境は大事ですよ。
近森会の強さの秘密
【管理部長 川添 f氏】

近森病院というのは、どこの部署に行っても勢いを感じます。その秘密はなんなのか?と考えていたのですが、ひとつは理事長である近森正幸氏で、もうひとつが管理部長 川添 f氏だと思います。管理部長というのは、事務長と同じ役割を持っているそうですが、川添氏の話を聞いてしびれました。

「我々事務方は、いかに医療従事者がよく働ける環境を作れるかが大事なのです。」

と。
この言葉は、最近に始まったことではなく以前から、有言実行されており、その工夫が随所に見られる。近森病院は、多くの特色があるが、それらは医療従事者が大事にされ、十分に才能を発揮できる場を用意してくれるからなのだろう。確かに、「働きやすい」環境なのです。当たり前のことを当たり前に実行していけば、おのずといい病院になるんだとしみじみ感じました。「患者さんにも職員にも、そして行政にも感謝される病院を作りたい」と・・・。さすが、器が違います・・・。かなり格好いい「オヤジ(失礼!)」でした。

写真下は、就労支援施設の上田真由美氏との談笑中の川添氏。
診療支援部長 寺田 文彦さん

「自分たちのできることはすべてやる」がモットーの診療支援部、自分たちが頑張ることで医師や看護師、医療技術職の職務満足度につながり、結果、そのことが患者さんのためになるとすばらしい理念を近森病院の診療支援部はもっている。

電子カルテの導入などで時折病棟などで混乱が来たすと素早く対応してくれる。24時間PHSをもって対応しており、夜間の受付対応などは、総看護師長も絶賛。現場と同じ意識を持っていると強く感じました。
診療支援部のシステムエンジニアとして活躍する奥田興司さん

近森病院のホームページや院内イントラネットを利用した院内学習システムなど病院のパソコン関連の仕事を一手に引き受けている。もともとは、一般企業でシステムエンジニアとして活躍していた経歴があり、非常にパソコンに詳しく医療従事者を根底で支えている。

現在、特に勧めているのがE-ラーニングで職種別の学習プログラムを開発しており、パソコンを利用して学習することができる。少し見せていただいたがかなりの内容で驚きました。病棟などでは、なかなか学習することができないが資料室の共用パソコンで本を開きながら学習するスタッフもいるという。医療従事者は広く深い知識・技術が必要です。学習の機会が整備されているというのは魅力ですね。
近森病院の院内広報誌「ひろっぱ
(HPから、バックナンバーを見ることができます)


職員のエッセイや研究発表会の紹介、新たに資格を取得したスタッフの紹介、新入職員の紹介などカラフルでユーモラスに富み、非常によみやすく構成されている。診療情報(患者数や手術件数)なども掲載されているので職員のモチベーション維持・向上にもつながるのだろう。

【BHI賞 最優秀受賞】
実は、「ひろっぱ」、ヘルスケア情報誌コンクールの最優秀賞を受賞する実力の持ち主なのです。すごいですよね。
近森会第二病院
「病院らしくない」がコンセプト

ストレスケアやうつ病が診療の中心という近森会第二分院。104床を有し、精神科 神経内科 ストレス外来 痛みのクリニック O-リングテストクリニックが診療科。

建物がきれいということもありますがプライバシーに配慮し落ち着いた雰囲気を作っている。0−リングテスト外来も見学させていただいたが、医学の神秘を感じました。
第二分院総看護師長(左)の松永智香さんと看護師長の山下ちぐささん

松永さんは、精神科看護はもちろん、患者満足度や職務満足度についての深い知識があり、取材通じて多くのことを教えていただきました。松永さんの看護感には、多くの看護師にとって学ぶべきところがあると思います。今後、サイト(看護どっと合言葉)を通じて発信していただければと思っています。近森会全体を通じてサービス業として高いレベルにあると感じますね。
近森会リハビリテーション病院 近森オルソリハビリテーション病院
近森会は、リハビリテーションにも非常に力を入れている。リハビリテーション病院にも見学をさせていただいたが、リハビリテーション室も広く、多くの機能回復訓練を行う設備が整っていた。また、病室も回復期リハビリに適したつくりとなっており、レベルの高さが伺える。看護師の意識も高く、本院総看護師長もその実力を高く評価している。
【編集後記】
8日間に渡って密着取材をさせていただきました。一言で言うと「いい病院」でしたね。現場の看護師は、どう思っているかわかりませんが、全国に先駆けて高齢化の進む地域で、今後の日本のモデルとなるような病院を作っています。補助金をもらっても赤字が増え続ける公立病院があることを考えると相当優秀でしょう。こういった病院がもっともっと増えていかないと日本の医療は早かれ遅かれ崩壊すると思います。取材中は、ほぼ満床でしたが、それでも救急車が来るとどうにかやりくりをして、「患者さんを少しでも助けよう」と誇りを持っているスタッフがたくさんいました。また、暖かく迎えてくれたことにも非常に感謝しております(名札を作っていただいたり、禁煙のお話をさせていただきました)。僕は、この経験を一生忘れないでしょう。そして、今経験を活かして今後、医療従事者として働いて行きたいと思います。これからは、個人病院の時代、それも、理事長の理念のしっかりした病院の時代だと思います。シバリが少ない分、積極的で動きが早い。次ぎの10年、どのような進化をしているのかとても楽しみです。あおやぎ
取材を希望される病院は、・・・